コクヨサプライロジスティクス
株式会社
代表取締役社長
若林 智樹 氏
Tomoki Wakabayashi
多角的な事業展開と社会連携、
両面への取り組みの中で
関係した方々とお互いに成長していく
コクヨサプライロジスティクス株式会社(以下、KSL)は、コクヨ株式会社のグループ会社として2007年に創業した。コクヨグループの中で1社だった物流子会社が文具事業とオフィス家具事業に切り離され、KSLは文具事業の物流子会社として立ち上がる。2021年に代表取締役に就任した若林社長は、物流一筋30年。自社の物流の良さを最も知る若林社長に、お客さまへ提供しているサービスや強み、誠実な社員の方に対する社長の想い、今後の展望など、経営者としての考えをお聞きした。
はじめに、創業からの経緯を
お聞かせください。
2000年代初頭、コクヨグループはオフィス家具と文具の製造・販売が主な事業でした。その後、物流子会社とコクヨのメーカー機能を連動して事業を進めてゆくという思想のもとに、オフィス家具事業と文具事業を切り離し、各々に物流子会社が立ち上がりました。私はKSL創業当時、別の事業部で通販事業(カウネット)の立ち上げに従事しており、KSLとは密接に仕事をしていました。
当時、通販事業は10年近く右肩上がりの成長を続けていた中で物流拠点が手狭になっており、コクヨグループとして打開策を模索している状況でKSLが立ち上がりました。KSLが主体となり、元々通販事業単独の施設であった物流センターにコクヨのメーカー機能や卸しの機能を統合し、効率的なセンターを作り上げる『IDC化構想』を展開していきます。この『IDC化』するセンターを立ち上げる際には、トラブルの発生も多く、非常に苦労しました。近畿IDC事業所の立ち上げ後には、なかなか生産性が上がらない時期がありながらも、協力会社さまにサポートを頂くことで乗り越え、無事に稼働することができております。
物流子会社としての強みは
どのようなところにあるでしょうか?
当社は、メーカー・卸し・通販の3つのチャンネルの仕事をできていることが、物流の子会社として最も強みのあるところだと思います。実際に文具メーカーさまの業務も頂いており、九州/P社さまや茨城/S社さまの物流業務をお引き受けしております。中国エリアでは、卸しの部分で輸送の共同化も実施させていただいております。物流子会社としてサービスを他社へ提供する際にも、当社が培ってきた強みを活かし、物流の前後に発生する業務も併せて受け持つことで、全国規模で貢献できます。
KSLさまとして注力されている
取り組みについてお聞かせください。
2024年問題(トラックドライバーへの労働時間規制)を前に『パレット輸送』の推進を始めております。これは、手積み作業により負担がかかっていた作業者の方やトラックドライバーの方、作業工数と人件費のコスト面で負担がかかっていたメーカーさまや、協力会社さまの負担軽減に寄与します。手積み作業の方が積載率・輸送効率は良くなりますが、『パレット輸送』を推進し、荷役される方々の作業効率を高め生産性を上げることで、2024年問題によるドライバーの拘束時間削減への対応や倉庫作業の負担軽減を目指しています。また、今後の取り組みとして、パレットの手積み作業(重筋作業)の部分を機械に置き換えていかなければならないと感じています。
働く方々を大切にされている
若林社長から見た
自社社員の
魅力についてお聞かせください。
弊社の社員は、誠実に、実直にして仕事をしてくれます。何か問題やトラブルが起こった際に「隣で困っている人をなんとか助けたい」という気持ちが社内で浸透しているというところが、弊社社員の魅力だと思います。
最近の事例として、近畿IDC事業所にて発生した設備障害があります。このとき、すぐに近畿IDC事業所の副所長が社内に応援を呼びかけ、普段は現場の事務所業務をしている人や大阪本社の人が応援にかけつけたり、東京の業務を統括する組織には近畿の出荷データを中部へ切り替えるなど、迅速に旗を振り、それに倣い社員全員が助け合いました。社員のその姿に私自身、込み上げるものがあり、Slackのチャンネルにて感謝の意を発信いたしました。
人材育成について
大事にされていることはありますか?
人は経験を重ねることで育つと思っています。経験する場所を経営陣が作り、その場所で試行錯誤しながら自身で業務に向き合い、考え、答えを見つけるという経験をする中で、人は成長すると思います。また、自身のキャリアアップや部署異動などを希望する意欲的な社員もいますので、一人ひとりがどこかの組織にとどまらず、さまざまな業務を経験できるよう、異動がスムーズに進む体制も整えております。私は、経営の立場としてその環境を作るということをやっていきたいです。
今後は、コクヨグループ全社を挙げて「残業時間の抑制」や「有給取得率アップ」「フレックスタイム制」などの取り組みをさらに強化していきます。この中で働く人への負担軽減や、多様な人材が自分らしく働ける環境づくり、ワークライフバランスの向上を後押しし、社員の定着化を図っていきます。
地域貢献や社会貢献活動について
お聞かせください。
近畿IDC事業所では、近隣中学校の社会見学の受け入れを実施しております。配送センター内の案内をし、実際に出荷作業を経験してもらいます。中学生活の中で実際に使っている「コクヨの文具がこんな風に保管されているんだ!」「物流センターで実際にお仕事ができて楽しかった!」という感想をもらっています。地域からの要請に応じる中で、地域に根ざした企業でもありたいと思っています。
また、千葉県の大学と産学連携の取り組みを3年ほど実施しております。私自身、30年間物流に携わっておりますが、物流業を仕事にしたいという人が少ないと感じています。この産学連携を通して物流の仕事の良さを知って欲しいという思いでこの活動をしています。主な取り組みとして、物流を主体とした授業のゼミ生を首都圏IDCへお招きし、物流課題解決提案をしていただいています。今年度は『昨今の人手不足をどのように解消していくのか』という課題に対してゼミ生の方と意見交換を行いました。ゼミ生からは「求人情報の掲載内容が学生の方には分かりづらい」や「ピッキングって何ですか?」、現場見学時に「現場が暗く感じる」などなど、物流に携わっていると当たり前に感じていたことにも、フレッシュで発想力豊かな、率直な意見が聞けました。これは大変ありがたいことです。学生の学びをサポートする企業であると共に、学生からも学び社内へ展開していきたいです。
SDGsへの取り組みをお聞かせください。
コクヨグループとして、SDGsの取り組みには力を入れており、その中でも循環型社会の形成に力を入れて取り組んでおります。実際に学生が使ったコクヨノート、企業さまや学校で使われるクリアホルダーを回収し再生させる取り組みや、カウネットの製品カタログを回収しトイレットペーパーへ再生するなどの取り組みを行っており、さらにサステナブル経営の実現を加速していくとともに、今後さまざまな商品やサービスを通して、社会問題の解決に貢献していきます。
コクヨグループがSDGsに取り組むことによってさまざまな方に刺激を与え、広げていくような立場でありたいと思っています。自社の取り組みだけでは大きな規模へと発展しないため、自社の取り組みや発信をさまざまなところへ波及させることで全体の規模を大きくしていきたいです。
コクヨグループとしての
展望についてお聞かせください。
コクヨグループとして事業の拡大を目指す中で、市場規模の拡大を図り、海外比率を高め、よりグローバルに展開していく動きを強めています。現在は3割ほどの文具事業の海外比率を、M&Aを繰り返しながら広げています。文具事業が先行して海外市場へ拡大しておりますが、オフィス家具事業についても、最近では香港の家具メーカーを買収するなど、文具事業と同様にM&Aを進めながら販路を広めていきます。販路開拓と同時に新しい事業も始めており、そのひとつにシェアハウス(住宅)事業があります。独身寮を改装し、さまざまな方にご利用いただいており、多様化した暮らしの中でコクヨがコミュニティーを作り上げ、このコミュニティーを通して豊かな暮らしをサポートする企業になることを目指しております。さまざまな小さなチャレンジを積み重ね、良い事例を横展開する中で、働き方や学び方の新しい体験を次々と生み出していき、持続的な成長を実現します。
KSLさまとしての夢をお聞かせください。
現在の最大荷主は通販です。当社は「卸し+通販」のビジネスサプライ事業を中心とした会社になってきています。今後、通販事業の出荷量を大幅に増やす野心的な目標を設定、成長戦略を描いているので、その成長戦略に連動する形で物流のインフラもしっかりと行うという物流構想があり、どのように投資していくかなどを練り上げているところであります。また出荷量は大幅に増やす一方で、作業工数は現状を保つという目標も掲げています。そのために最新設備を導入し、省人化を図ることも検討しておりますが、設備を入れるだけでは省人化にはならないため「最新設備をどう活かすか」ということを大事にしながら始めていきたいと思います。
みんなの場に期待することを
お聞かせください。
KSLを含むコクヨグループとして「オープンに社会貢献をする」という指針も出しておりますので、この“みんなの場”を通して他の企業さまと社会貢献・地域貢献活動の取り組みを行い、当社としてお役立ちできる部分があれば、一緒に活動を進めていきたいです。